摘示事実の真実性を証明する資料を被告が提出しない場合に原告に要求される証明の程度

弁護士  小倉 秀夫

 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害された者が当該特定電気通信の発信者に関する発信者情報の開示を受けるためには、少なくとも、「当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」ことが必要です。

 そして、多数説は、「当該開示の請求に係る侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」といえるためには、開示請求者の権利が侵害されたことが明らかであるだけでは足りず、違法性阻却事由の存在を窺わせる事情がないことまで必要とします。

 そして、名誉権侵害の場合、

① 摘示事実が公共の利害に関するものであること

② 当該事実摘示が専ら公益目的でなされたこと

③ 情報発信者が当該摘示事実を真実と証明したこと

の三要件を具備した場合には、違法性が阻却されるとされており、

① 摘示事実が公共の利害に関するものであること

② 当該事実摘示が専ら公益目的でなされたこと

③ 情報発信者が当該情報発信当時、当該摘示事実を真実と信ずる相当の理由があったこと

の三要件を具備した場合には、責任が阻却されるとされています。

 このため、名誉権が侵害されたとして発信者情報開示請求を行った場合、コンテンツプロバイダないしアクセスプロバイダ側の代理人から、摘示事実が真実でないことの立証をするように求められることが多いです。

 では、開示請求者は、摘示事実の反真実性について、どこまでの立証を求められるのでしょうか。最近の裁判例を見てみましょう(なお、判決文を引用する際に、見出し番号を省略しています。)。

 これらの裁判例を見る限り、プロバイダ(開示関係役務提供者)側である程度摘示事実の真実性を証明する資料を出さないと、開示請求者側は、関係者の陳述書を出すだけで、「違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情」が存在しないと認定してもらえることが多いようです。摘示事実の内容次第では、陳述書すら必要とされていないケースも散見されます。時場所方法が特定されていない事実摘示(例えば、原告が性加害者(性的暴行を行った者)である旨の事実摘示など)についても、プロバイダ(開示関係役務提供者)側で具体的な証拠を出していない場合には、そのような事実が全くないことを網羅的に開示請求者側で証明しなくとも、「違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情」が存在しないと認定してもらえているようです。

東京地判令和6年11月29日(令和6年(ワ)第13489号)

(「実際の施術自体も下手な為、普通にオペミスされました。」及び「本来ならば前回の通院の時点で治療が終わっていたので、今回使用した麻酔代などは発生しなかったはずなのですがその麻酔代も当たり前のように請求されました。」との記載について)

証拠(甲3から7、12、13、18)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
本件医院で行われる施術のうち、原告が、患者に対して、特に麻酔代として高額の請求をするのは、自由診療である静脈内鎮静法による麻酔(本件麻酔)を行った場合に限られる。
本件医院においては、局所麻酔を用いた施術も行われているが、その場合、原告は、患者に対し、上記麻酔の施術に要する費用自体は請求しておらず、麻酔剤の費用のみ他の医療費と併せて請求している。
また、上記麻酔剤の費用には保険が適用されるため、1回当たりに患者が請求される上記麻酔に係る麻酔代は数十円程度にすぎない。
本件医院は令和5年5月に開院したばかりであり、本件医院において、上記開院から本件投稿がされた令和5年8月から9月頃までの間に、患者との間で、医療過誤等の問題が生じたことはなく、本件麻酔及び局所麻酔のいずれの麻酔代についても、患者に対して二重請求されたような事例は見当たらない。
特に、前記cの期間中に、本件医院において本件麻酔が行われた患者は3名のみであり、同人らについても、医療過誤や麻酔代の二重請求は生じていない。
そして、このうち2名については、そもそも本件口コミに記載されたような診療経過を辿っていないし、残り1名(以下「本件患者」という。)については、本件麻酔を受けた日の2週間後に、再び本件麻酔を受けたという点で、本件口コミの記載内容と同様の診療経過を辿っているものの、同人は、明示的に自らが本件発信者ではない旨供述している上、その後も本件医院を受診している点で、「もうここに行くことはないでしょう。」という本件口コミの記載内容と整合していない。
以上の認定事実によれば、本件医院において、本決クチコミの内容に該当するような事例は見当たらないというべきであり、本件口コミによって摘示された前記事実がその重要な部分について真実であることをうかがわせるような事情は存在しないというべきである。
本件医院においては、局所麻酔を受けた患者に対しても麻酔剤に係る費用は請求しているところ、本件各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、上記各患者について、その各診療録等を基に、本件口コミの記載内容と整合する診療経過を辿っているか否か等の調査、確認までは行っていないものと思われる。そして、上記各患者の中に、本件医院で受けた治療について、主観的に医療過誤又は不適切な治療を受けたと感じた者がおり、同人が、上記体験を基に、本件投稿をした可能性は完全には否定できない。
しかしながら、これは飽くまで抽象的な可能性にすぎず、およそ違法性阻却事由の存在を具体的にうかがわせるものとはいえず、この点に係る被告の上記〈2〉の主張も、本件発信者から何ら意見聴取(法6条1項)をせずに、上記抽象的な可能性を指摘するものにすぎない。
そもそも、前記イ(ア)cのとおり、本件医院の開院以来、本件投稿がされた頃までの間に、本件医院を受診した患者との間で、医療過誤等の問題が生じたというような具体的事情も見当たらない。また、同bのとおり、局所麻酔に係る麻酔代は、他の医療費と併せて請求されるものであるし、その額は1回当たり数十円程度にすぎず、仮に上記麻酔を受けた患者の中に、主観的に医療過誤又は不適切な治療を受けたと感じた者がいたとしても、上記麻酔代を請求されたことのみについて、特に不満を述べることも考え難い。それゆえ、前記抽象的可能性が現実に発生したとは容易には考え難い。
もとより発信者の表現の自由、プライバシー権及び通信の秘密を保護すべき必要があることは言うまでもないが、この点について、法は、開示関係役務提供者に対し、当該発信者に対する意見聴取義務(法6条1項)を課すことで、これを担保しているものというべきである。そして、本件においても、本件発信者からの上記意見聴取の結果、前記可能性が具体的に疑われるのであれば別段、被告は、前記のとおり、上記意見聴取を行うこともせずに、前記抽象的可能性を指摘するにすぎない。このような場合にまで、そうした抽象的可能性を完全に排斥し得るだけの詳細な調査、確認をしなければ、前記アの「違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないこと」の立証がされたといえないと解することは、匿名又は仮名による情報発信によりその社会的評価を低下された者に対し、当該発信者に対する裁判手続を通じた責任追及の途を事実上閉ざすことになりかねず、法の趣旨にも反するというべきであって、相当でない。
よって、前記抽象的可能性があることのみをもって、前記イの認定が覆るものとはいえず、被告の前記〈2〉の主張は採用できない。

東京地判令和6年10月4日(令和6年(ワ)第10451号)

(原告が「長い間Cの右腕として執拗な誹謗中傷を被害者にして、訴訟取り下げやメンタル崩壊に追い込む役」を担ってきたとの事実摘示について)

原告がCと関係がある人物であるとも認められず(甲11)、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情も存在しない。

東京地判令和6年9月20日(令和6年(ワ)第12648号)

(原告代表者の意向により、原告が、音楽教室の生徒や外注先を被告として、その言論を抑圧することを主たる目的とする不当な訴訟を次々に提起しているとの摘示事実について)

原告代表者は、自身の陳述書(甲6)において、原告が生徒や外注先を被告として訴訟を提起したことはないと述べているところ、公開を原則とする民事訴訟の存否につき虚偽の供述をすることは通常考えにくいこと、原告代理人による裁判例検索(裁判所HPの裁判例検索及び(省略)第一法規法情報総合データベース)の結果によっても、原告が被告として訴えられた訴訟(甲4)しか見当たらなかったこと(甲8、9)も踏まえると、上記供述には信用性が認められる。
本件投稿は、原告が生徒や外注先を被告として次々と訴訟を提起したという内容であるが、上記供述内容に反すると認められ、これを真実と信じたことについての相当な理由もうかがわれない。
したがって、本件投稿について、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しないと認められる。

東京地判令和6年8月27日(令和6年(ワ)第67号)

(本件クリニックにおけるホクロの切除の施術が拙劣であるため、その施術箇所が治癒した後も、当該箇所にホクロよりも大きな傷跡が消えずに残存した患者が存在している旨の摘示事実について)

本件投稿者が本件クリニックにおいてホクロを切除する施術を受けた直後に本件傷等が生じたとしても、上記の創部の治癒の過程等に関する知見を踏まえると、本件傷等が治癒した後もなお本件投稿者の顔面にホクロの3倍ほどの大きさの傷跡が残存しているとの事実の存在をうかがわせるものではない。
そして、本件投稿者が被告に対して提出した回答書等(甲22)においても、本件投稿者は、ホクロを切除する施術を受けた日に近接する時期の事情や写真を提供しているにとどまり、本件傷等が治癒した後も傷跡として残存していることについては、何ら具体的な事情を述べておらず、上記傷跡の残存を示す写真等も添付していない。
以上に鑑みると、本件投稿者が、本件クリニックにおいて顔面のホクロを切除する施術を受けたが、その施術箇所が治癒した後も、当該箇所にホクロの3倍ほどの大きさの傷跡が残存しているという事実が真実であるとうかがわせる事情は認められない。 したがって、本件の証拠関係の下においては、本件記事の投稿について、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情はないということができる。

東京地判令和6年6月11日(令和6年(ワ)第178号)

(原告が、本件医院に勤めていた際に横領を行っていたとの摘示事実、当該横領がばれた腹いせで本件医院の嘘の情報を流しているとの摘示事実について)

本件医院の元理事長は、原告とF(以下「F」という。)が、本件医院において横領を行っていた旨陳述しているほか、これと符合する内容の患者の陳述書や領収書が存在することが認められる(乙1~4)。しかしながら、原告は、横領の事実を否認し、被告の提出する上記各証拠も、専らFに係るものであり、原告に関するものとしては、元理事長による原告がFに横領を指示していたという陳述と、原告が派手な生活をしていたことを裏付けるSNSの投稿等のみであって、いずれも原告が横領をしていたことを直接証明するものではない。しかも、元理事長の陳述は、代理人弁護士による聞き取りという体裁をとっており、元理事長の陳述自体、伝聞にすぎないし、この点を措くとしても、その陳述内容は、原告がFに横領を指示していた具体的な根拠に乏しい。患者から金銭を受け取る部屋と受付との間の通路には監視カメラが設置され、容易に現金を抜き取ることができない状況であったことがうかがえ、実際、現金を抜き取る場面の録画等も提出されていない(甲15)。プロバイダ責任制限法5条2項が、発信者の匿名性を維持し、発信者自身の手続参加が認められていない手続法の枠組みの中で、発信者の有するプライバシー権や表現の自由等の権利ないし利益と権利を侵害されたとする者の権利回復の利益をどのように調整するかという観点から、権利侵害の明白性の要件を設け、発信者情報の開示を請求する側において、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情がないことを主張立証する必要があるとされていることからすれば、その要件該当性の判断に当たっては、権利回復の機会を事実上閉ざすことになるような解釈をとるべきではない。本件に関していえば、横領をしていないことの完全な立証はおよそ不可能を強いるに等しく、名誉毀損訴訟において、被告側が主張立証責任を負う違法性阻却事由(真実性)の判断と完全に同一である必要はない。そうすると、原告が本件医院において横領を行っていた可能性を完全に否定することはできないものの、他方で、被告の提出する上記各証拠のみをもって、原告が横領を行ったという事実が真実であることをうかがわせるとまではいうことができず、原告は、本件医院において横領をしていないことを一応立証しているというべきである。

東京地判令和6年4月19日(令和5年(ワ)第16130号)

(「過去治療したが認識なく葉を半分削られて銀歯を入れることになった」という部分について)

虫歯治療の際に歯を削ることがあることは一般に認識されている上、その施術中に自分が歯を削られていることは当然分かることからすれば、本件記事2の内容は、歯を削られるとの認識がないまま歯を削られた、すなわち全く説明なく歯を削られたとまで理解されるものではなく、「半分」削られるとは聞かされていなかったのに「半分」削られたという本件発信者2の認識が投稿されていると理解されるにとどまるものである(本件発信者2の主観において「半分」削られたと感じているにすぎず、何らかの客観的な指標に基づくものではない。)こと、原告においても、治療前に治療の概要を説明した旨述べるにとどまり(甲51)、必ずしも、どの程度歯を削るかについての説明をしたかは明らかではないことからすれば、本件記事2の内容が真実であることをうかがわせる事情が存在しないとまで認めることはできない(本件投稿2から間をおかずに本件医院の側からされた返信においても、「認識なく削られたということですが、当院では治療前にしっかり説明をし、患者様から了解をとってから治療を始めますので、患者様が納得した上で治療を行なっていますのでどういう状況か理解できません。」とのみ記載されており〔乙37〕、具体的にどの程度の説明をしたかまでは言及されていないところでもある。)。また、本件投稿2が専ら公益を図る目的でされたものではないことをうかがわせる特段の事情も見当たらない。

東京地判令和6年3月7日(令和5年(ワ)第12768号)

(「以前働いていましたが、Eって人のイジメが酷くて辞めました。副社長にも相談しましたが、(略)、そんな人じゃないよと言われるだけで何も対応してくれません。」「やってない事を人のせいにしたりで、パート・社員さんが何人も被害にあってます。しかし副社長はそれを鵜呑みにし、Eって人を庇います。」との記載について)

証拠(甲19)によれば、原告には「E」という従業員はおらず、これに類似する「G」という従業員はいるものの、原告の副社長の立場にある役員は、当該従業員からいじめを受けたという相談を受けたことがないと陳述していることが認められ、他方で、上記陳述の信用性を疑わせるような反対証拠は何ら提出されていない。そうすると、現時点においては、本件記事の重要部分について、名誉毀損の違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情(真実性)は存在しないと認められる。
なお、発信者情報開示請求訴訟においては、発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について、原告に立証責任を課すのは酷というべきであるから、原告は、発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について立証しなくとも、権利侵害の明白は認められると解する。

東京地判令和6年1月29日(令和5年(ワ)第5929号)

(本件学校の4年生の学年主任及び副主任が異常に神経質であることなどにより毎年教師が辞めている旨の摘示事実、¥本件学校の教頭に対する不満により教師が年度途中で本件記事2の投稿の前年は2人、その翌年は3人が辞めた旨の摘示事実について)

総数60人前後の本件学校の教師のうち令和3年及び令和4年に計9人が退職しており、その理由として、一身上の都合と記載された退職届は一定数存在し、少なくとも1名の休職満了による退職、懲戒解雇があるほかに、管理職3名のパワーハラスメントにより精神的被害を被り、また、ある者により事実上強制的に退職に追い込まれ、勤務することが不可能になった旨を明確に記載した退職届も存在することが認められ、他方、上記のとおり、令和4年時点の本件学校の教頭作成の陳述書(甲16)のみでは、上記管理職3名のパワーハラスメントの実態、影響が他の者にもあったかなどが的確に認定できないといわざるを得ない。 そうすると、本件記事1ないし本件記事4及び本件記事6については、摘示された事実が真実であることについて、これをうかがわせるような事情が存しないと認めるに足りないといわざるを得ない。

(「Fの考え方に同意してもらえない成長に乏しく実力もない教師はお互いにとって不幸なだけFが生き残っていくにはこのミスマッチは解消しなくてはいけない」との投稿、これに続く「Fや管理職、経営層から求められていることが理解できないから平教師として燻ることになっていたのに、その状況を正面から見つめようとせず、原因をすべて周囲にしてしまう他責思考のかたまりのだった教師は見込みがないよ。」との投稿、これに続く「もう一点付け加えます。今いる教師や新たに入ってきた教師は非常に優秀で個性豊かな方が多いです。将来ある若者を託すに足る人材です。」との投稿、「と、成長に乏しく実力がなく、他責思考で自分を客観視できていない管理職が申しております(笑)」との投稿について)

何ら具体的な根拠を示さずに(前の投稿の表現をそのまま返す形で)前の投稿をした者について「成長に乏しく実力がなく、他責思考で自分を客観視できていない管理職」などの意見を表明したものであり、真実であることの証明も、真実と信ずるについて相当の理由があると認めるに足りる証拠もないといわざるを得ない。

東京地判令和5年12月1日(令和5年(ワ)第10315号)

(原告が本件店舗の客である発信者と性行為に及んだとの投稿について)

C市内のスナックの一店舗である本件店舗の経営者の娘(原告)に関する本件投稿は、その内容等に鑑みても、公益のためであるとか、公共の利害に関する事実であると認めることはできない。また、本件全証拠によっても、本件投稿の内容が真実であると認めるに足りる証拠はない。

東京地判令和5年11月20日(令和5年(ワ)第14067号)

(原告が、本件風俗店において利用客に対して性的サービスを行う際、利用客を誘惑して本件風俗店で禁止されている性器の挿入行為に及ぶよう自ら仕向けておきながら、同行為が行われると、強姦被害に遭ったとして利用客に示談金の支払を請求するとの摘示事実、示談金の請求方法について、本件風俗店のマネージャーが一律に一定額以上の支払を迫り、支払能力を欠く者には金目の物全てを弁済に充てさせるとの摘示事実、示談金の請求方法について、警察を介さず当事者間で何とかして請求額を支払わせるとの摘示事実、女性である原告及び男性マネージャーが、金銭目的で共謀して利用客に性器の挿入行為を行うよう誘導し、金銭を請求するところ、請求相手が気弱で金銭の回収が容易と思われる利用客であれば積極的に請求するとの摘示事実、原告が強姦被害を主張して行った利用客への示談金請求が脅迫に該当するのではないかとの法的評価について)

本件発信者が、①原告が、本件利用客との示談金合意以外にも性器の挿入行為に関する示談金交渉を数回行っており、その頻度が高いと思われること、②当該示談金交渉に関し、当時、原告と交際関係にあった本件風俗店の店長が、まくし立てるような口調で交渉し利用客を萎縮させていたことを回答した事実が認められる。
しかしながら、これらの事実は、本件投稿1及び7で摘示された、金銭目的で原告が利用客を誘惑し、性器の挿入行為に至るよう自ら仕向けた事実についての真実性をうかがわせるものではない。むしろ、前記認定事実(3)のとおり、本件風俗店において性器の挿入行為は禁止されており、原告が感染症や妊娠のリスクを負ってまで自ら金銭目的で同行為に及ぶべき動機が存したものとは認めるに足りない。さらに、前記認定事実(4)のとおり、本件利用客が、謝罪や示談金支払の前提として、上記強姦被害は本件利用客の暴行により原告の反抗を著しく困難にした上で行ったことを認めている事実に照らしても、原告の誘導行為があったものと推認することは困難である。仮に、本件発信者の回答のとおり、本件利用客以外との間で原告が示談金交渉を複数回行った事実があるとしても、それら全てが金銭目的による原告の誘惑行為により生じたことを推認させるものと評価することはできない。
そして、示談金の請求方法について、本件発信者の回答のとおり、本件風俗店の店長がまくし立てるような口調で利用客を萎縮させていたとの事実が存したとしても、かかる事実は、本件投稿2及び4において摘示された、示談金額が一律に一定額以上で、支払能力を欠く者には金目の物全てを弁済に充てさせるとの事実や、警察を介さず当事者間で何とかして請求額を支払わせるとの事実、また、本件投稿3で摘示された、請求相手が気弱で金銭の回収が容易と思われる利用客であれば積極的に請求するとの事実についての真実性までをもうかがわせるものでない。加えて、本件投稿5及び6における、原告の示談金請求が脅迫に該当するとの法的評価に言及した部分についても、本件発信者の回答のとおり本件風俗店の店長がまくし立てるような口調で利用客を萎縮させたという以上に、同人又は原告が利用客に対してその財産等に害を加える旨告知して示談金を請求したとの事実は見受けられない。そうすると、上記法的評価の前提事実が重要な部分について真実であるとか、真実と信ずるについて相当の理由があることがうかがわれるということはできない。
この他、本件で提出された全証拠及び弁論の全趣旨によっても、本件各投稿において摘示された事実や意見ないし論評の前提となる事実が真実であることをうかがわせる事情は認めることができず、本件につき違法性阻却事由が存することがうかがわれるということはできない。

東京地判令和5年7月19日(令和4年(ワ)第33328号)

(原告が、「C」を批判したアカウントを脅迫・恫喝するために、裏アカウントを作成し、上記批判したアカウントを恐喝しているとの摘示事実について)

被告は、原告が、「D」というアカウント(甲3)を作成し、本件記事の投稿に用いられたアカウント(F。当時)に対し、攻撃的なツイートを繰り返したことに照らすと、本件記事には違法性阻却事由がある旨主張する。しかし、「D」というアカウントのプロフィール欄には「誹謗中傷、名誉毀損は許さない。」「誹謗中傷や名誉毀損する奴を特定したい、懲らしめたい人は気軽にご相談ください。」などの記載があること(甲3)、上記アカウントの運営者は、原告、本件会社及び「C」とは何らの関係もない第三者を擁護し、当該第三者を誹謗中傷した発信者に対する攻撃的なツイートを行っていること(甲16)、原告は上記アカウントへの関与を明確に否定していること(甲10及び17)に照らすと、上記アカウントは、原告のみならず、短文投稿により誹謗中傷を受け名誉を毀損された者を広く支援するために運営されているものであり、被告がるる指摘する点を考慮しても、原告が運営しているものとまでは認められない。

東京地判令和5年6月7日(令和4年(ワ)第28644号)

(原告の従業員に対する態度が酷いため、本件歯科医院の従業員が定着せずに頻繁に入れ替わるとの摘示事実について)

証拠(5の4、8)によれば、原告は、本件記事4の投稿に対して、「仕事ですので、厳しく指導することもございますが、スタッフへの感謝の気持ちはいつも持っており、伝えております」と回答していることが認められ、上記事実に照らせば、本件記事4の投稿者において、原告が従業員に対して厳しく指導する場面を目にして「当たりが強い」との印象を抱いたことも想定し得るところである。
また、本件記事4は令和2年10月から令和3年10月の間に投稿されたと認められるところ、証拠(甲7の1ないし8)によれば、本件歯科医院で令和2年に勤務した従業員は合計13名であり、同年中に4名の従業員が入社し、3名の従業員が退職したこと、令和3年に勤務した従業員は合計11名であり、同年中に1名の従業員が入社し、2名の従業員(令和2年に入社した従業員1名及び令和3年に入社した従業員1名)が退職したことが認められ、本件歯科医院において、一定の割合で従業員が退職している事実があることは否定できない。
イ他方で、本件記事4の記載は、原告の従業員に対する態度を原因として、従業員が短期間で退職するとの事実を摘示しているところ、退職の原因が原告の態度によるものであることを示す証拠は認められない。かえって、原告が、本件記事4の投稿に対して、退職した従業員のうち2名は寿退社である旨回答していることや、従業員を指導する際には細心の注意を払っている旨の陳述書を提出していることを踏まえれば、上記摘示事実の重要部分が真実に反すると認められる。
以上によれば、本件各投稿記事について、違法性阻却事由の存在を窺わせる事情は認められない。

東京地判令和5年5月29日(令和4年(ワ)第22626号)

(「顔を整形しすぎて」「みんな整形と豊胸なんは知ってて通ってるし大人気なんだからそれで良いやん。」との投稿について)

前提事実及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿は、いずれも摘示された内容が真実であることをうかがわせる事情はなく、本件掲示板の性質、本件投稿の内容に照らすと、公共性・公益目的があるともいえない。また、被告らの主張を踏まえても、他に、本件投稿について、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は認められない。

東京地判令和5年5月23日(令和5年(ワ)第903号)

(「また詐欺グループがDに来たのか」との投稿について)

原告代表者は本件店舗が顧客を欺罔して金銭を詐取したことはない旨述べていること(甲6、7)、一件記録を踏まえても原告ないし本件店舗が詐欺を行ったことをうかがわせる事情は見当たらないことに照らせば、現時点において、本件記事2について、名誉毀損の違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情(真実性)は存在しないと認められる。なお、発信者情報開示請求訴訟において、発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について、原告に立証責任を課すのは酷というべきであるから、原告が発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について立証しなくとも、権利侵害の明白性は認められると解するのが相当である。

東京地判令和5年5月19日(令和4年(ワ)第29625号)

(Cは出会い喫茶であるにもかかわらず、原告が、毎日、Cの利用客である男性を射精させている旨の摘示事実について)

原告は、Cの利用客である男性を射精させていることを否定し、その旨陳述するところ(甲11)、本件投稿1には、上記摘示事実が真実であることを裏付ける根拠が記載されていないことからすれば、上記摘示事実は真実であるとは認められず、同事実が真実であると信じたことについて相当の理由があるとも認められないから、本件投稿1に係る違法性阻却事由又は責任阻却事由の存在をうかがわせる事情が存在するということはできない。

東京地判令和5年5月11日(令和3年(ワ)第12763号)

(原告が、中国人を騙して駐車場代や高速代を騙し取っているとの摘示事実について)

証拠(甲12)によれば、原告が上記摘示事実に該当する行為を行ったことはないと認めるのが相当であるから、上記摘示事実の内容は真実ではなく、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は見当たらない。 よって、本件投稿は、原告に対する名誉毀損に該当し、原告の権利を侵害するものであることが明らかである。

東京地判令和5年5月9日(令和4年(ワ)第28042号)

(元内親王であるG(本件記事掲載当時)の夫であるHの母親の遺族年金及び傷病手当金の不正受給疑惑について、本件記事執筆時点の証拠関係では捜査機関によって事件化される可能性はゼロであるなどと述べる記事を作成した原告についての「幾らもらって駄文書いてんだよ?」との投稿について)

甲18の1及び弁論の全趣旨によれば、原告が、H又はその母親その他これらの者を擁護したい者から報酬をもらって本件記事を執筆したことが真実であるということはできず、その他、本件全証拠によっても違法性阻却事由の存在はうかがわれない。

東京地判令和5年4月26日(令和4年(ワ)第28822号)

(原告による撤去撤回の申入れが国交省の担当者間で引き継がれていることに関し、氏名不詳者が「要注意人物として引き継ぎされているのですね。」と書き込み、それに対してEが「そういうことですね。それを『繋がり』と自慢する神経が私にはわかりません。」とツイートしたのを受けて、本件投稿者が「要注意のクレーマーとして引き継ぎされたのが嬉しかったんでしょうか」等と投稿したことについて)

本件投稿者が公益目的をもって本件投稿2を行ったかどうかはともかくとして、同投稿が摘示する事実が真実である又は真実と信ずるについて相当の理由があることを窺わせる事情は存在しない。

東京地判令和5年3月27日(令和4年(ワ)第23159号)

(原告が働いていた店舗のトイレ内で客と性行為をしたとの摘示事実について)

違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情も認められず、原告の名誉を毀損することが明らかである。

東京地判令和5年3月14日(令和4年(ワ)第29366号)

(「今年は誰がD28055に続いてマネージャーに上がるのと引き換えに孕まされるんだ?w」との投稿について)

本件記事1の「?w」という揶揄する表現に照らせば本件記事1が公益目的でされたものであるとは到底認め難く、また、証拠(甲2)によれば、原告Xは原告法人が性行為や妊娠と引換えに女性従業員を昇進させているとの事実は一切ない旨陳述していることに照らせば、本件記事1について、名誉毀損の違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情(真実性)も存在しないと認められる。

東京地判令和5年3月7日(令和4年(ワ)第22721号)

(原告の代表取締役であるAが原告の代表として、いわゆる「+0.5dBのアコリバ事件」(前記1(4))をすっぱ抜いた本件記事1の投稿者のオーディオ仲間に対し、嫌がらせや勤務先への架電をし、ノイローゼに至らせたとの摘示事実について)

甲6及び弁論の全趣旨によれば、原告の代表取締役であるAが、「+0.5dBのアコリバ事件」と呼称される原告の雑誌付録CDの音声データの変質事件を指摘した人物に対し、嫌がらせやその勤務先への架電を行ったことが真実であるということはできず、本件記録を精査しても違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しない。 したがって、本件記事1は、原告の名誉を毀損することが明らかであると認められる。

東京地判令和5年2月24日(令和4年(ワ)第10422号)

(原告が悪徳なマルチまがい商法を行う集団と関係の深い組織であり、お金を払ってまるで信頼できるニュース記事のように虚偽のプレスリリースを出すような会社であるとの摘示事実及びプロジェクト等と称して十分な給与を支払わずに構成員を働かせるような組織について言及した一連の投稿に、悪徳な団体のフロント組織と述べて「ワクセル」のハッシュタグを付けることにより、原告が上記のような悪徳な団体であるか又はこれと関係の深い組織であるとの摘示事実について)

原告代表者の陳述書(甲3、25)によれば、原告代表者は、以前、いわゆマルチレーベルマーケティング(以下「MLM」という。)を行う企業に関与していた時期があるものの、原告の事業は、コラボレーターと呼ばれる個人事業主や専門職等に対する経営支援や投資を行うものであり、MLMや、「環境」と呼ばれるオンラインサロン事業等とは無関係であること、原告代表者は、MLMビジネスを一緒にしていた知人が立ち上げたオンラインサロンのセミナーやイベントに招かれて講演をしたりしたことがあるが、それらの運営に関与しているわけではないこと等が述べられ、これに沿う証拠(26から28、33から43)が提出されており、本件各投稿に係る事実が真実ではないことが一応立証されているといえる。なお、証拠(乙1、丙4、10)によれば、本件各通信の発信者は、被告らに対する回答書において、原告代表者が事業家集団環境の組織全体に向けてメッセージを発信したメールの存在を指摘していることが窺えるものの、その意味するところや真偽は必ずしも明らかでなく、本件各投稿に係る事実の真実性や相当性があることが窺われるとはいえない。
以上からすると、本件各投稿による名誉棄損について、違法性阻却事由の存在を窺わせるような事情があるということはできない。

東京地判令和5年2月20日(令和4年(ワ)第12307号)

(「勉強がわからないから通わせているのにそんなこともわからないのかって言われてとても嫌だった。」との投稿について)

証拠(甲3の1~3の4、11~15)によれば、原告が生徒に対して、「そんなこともわからないのか」と生徒の能力や資質を否定し、馬鹿にした教え方をしている事実は認められず、その他、本件投稿記事の投稿者に対して、原告が「そんなこともわからないのか」という発言をしたことをうかがわせる証拠はない。そうすると、本件投稿記事のうち、上記事実摘示部分は事実に反するものということができる。その他、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情も認められない。
よって、本件投稿記事は、原告の名誉権を侵害することが明らかといえる。
これに対し、被告は、生徒の陳述書はわずか4名分提出されているにすぎない上、当該4名の生徒が本件投稿記事の投稿者と同時期に在籍していたか否かも明らかでないから、これらの証拠をもって反真実であることが立証されているとはいえない旨主張する。しかし、本件全証拠に鑑みても、原告が、時期によって指導方法を変更したことはうかがわれない上、4名分の陳述書であっても、原告の指導方法等の事実を推認するに十分であって、これを覆す反証もされていないから、被告の上記主張は上記認定判断を左右するものではない。

東京地判令和5年2月14日令和4年(ワ)第6292号

(「パネマジが酷すぎる」、「パネマジに騙されて」「パネマジと年齢詐欺がひどい」「J掲載の画像と店の画像が全然別人。店の画像はレタッチが下手すぎてイジリすぎがバレバレ。」との記載を含む投稿について)

証拠(甲11)及び弁論の全趣旨によれば、本件各投稿につき違法性阻却事由を窺わせるような事情は存在しないことが認められる。

東京地判令和5年1月26日(令和4年(ワ)第17310号)

甲第5号証の1ないし3、第6号証に弁論の全趣旨を総合すると、本件病院は、令和元年12月4日以降、「●●●」と名付けられた犬の腫瘍の治療を行っていたところ、令和2年12月30日、「●●●」の咳がひどく、呼吸がぜえぜえとしていたことから、飼い主が、同日午後3時頃、「●●●」の診療のため本件病院を訪れたこと、本件病院において、「●●●」の診療に当たった担当医は、同日、「●●●」の診察を行ったところ、「ストライダー」、「努力性呼吸」、「上部気道閉塞」、「チアノーゼ」、「喘鳴」等の多数の症状が見られ、酸素マスクを装着する等の治療を行っても症状の改善が見られなかったこと、そこで、同担当医は、「●●●」の呼吸を落ち着かせるために気道の確保を最優先すべきであると判断し、同日午後4時以降、「●●●」に対する麻酔処置を開始した上、気管チューブの気管内挿管を実施するなどの治療をしたこと、その後、「●●●」は、本件病院で入院治療を受けることとなり、血液検査やレントゲン検査、心エコー検査等の各種検査を受けるとともに、複数の担当医による医療的措置を受け、心臓性の肺水腫になるような状態ではないものの、誤嚥性などの肺炎、気管虚脱等があり得ると評価されたこと、そのため、同担当医らは、「●●●」の飼い主に対して、上記診察等の結果に基づき、その病状等について、気管挿管をしていないと命の危険があり、抜管後も危険があることや、血液検査の結果からは抗がん剤が投与されて1週間目なので白血球は少なめであり、このまま白血球が下がっていくと状況的には不利であることなどの説明をした上で「●●●」の経過観察を行ったこと、その後も、「●●●」に対しては、各種検査や医療的措置が実施されたものの、「●●●」は、令和3年1月1日午前2時7分頃、呼吸が停止し、気管チューブから血液様の液体も見られるようになり、同日午前4時15分頃に心拍が低下し、同日午後4時20分頃死に至ったことが認められ、本件全証拠によっても、本件摘示事実が指摘するように、本件病院の担当医が、「●●●」に対し、無許可で麻酔を何度も繰り返したなどの事実は認められず、本件病院において、「●●●」が寝かされたまま的確な治療をされずに放置されたなどの事実も認められない。また、本件病院が、ペット保険等の損害保険に関し不正請求ないし多重請求をしたなどの事実を認めるに足りる証拠はなく、刑事告訴を受けるような犯罪行為をしたことを認めるに足りる証拠もない。したがって、本件摘示事実のうち、本件病院が、「●●●」に対し、無許可で麻酔を繰り返し、的確な治療をせずに放置したとの事実を摘示する部分や、保険の不正請求ないし多重請求をしたとの事実を摘示する部分などの重要な部分は、いずれも真実ではないと認められる。

東京地判令和5年1月5日(令和4年(ワ)第11269号)

(「稼いだお金はパパ活やキャバクラに使用しており、いい歳して若い女の子と遊ぶのが好き。趣味は、自分の自慢話で延々自分の成功体験をひけらかす割には、女の子にはあまりお金を使わないことで有名。」との摘示事実について)

甲6及び弁論の全趣旨によれば、原告がパパ活を行っており、パパ活の相手に本気で好かれていると勘違いしているとの摘示事実が真実であるということはできず、本件記録を精査しても違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は存在しない。

東京地判令和4年12月8日(令和4年(ワ)第18836号)

被告からの意見照会に対する本件投稿者の回答書(乙1)によっても、原告が本件投稿に記載された行為をしたとの具体的な事実が指摘されていないばかりか、本件投稿者自身が、原告が鹿を殺していないことは共通の認識であるなどと陳述するに至っていることに鑑みれば、本件投稿の内容が真実ではなく、かつ、本件投稿者自身その内容が真実であることにつき相当な理由があったとみる余地はないというべきである(なお、本件投稿者において本件投稿に係る摘示事実が真実であると信じるについて相当な理由があったとしても、それは故意又は過失が欠けるというにとどまるのであって、本件投稿により原告の名誉権が違法に侵害されたことに変わりはないが、この点はおく。)。

東京地判令和4年11月15日(令和4年(ワ)第19874号)

証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、原告が顧客に対して配信する為替レートは、取引通貨ごとに時々刻々と機械的に生成されてシステム的に顧客に配信される仕組みとなっており、原告が生成過程で操作を加える仕組みとなっていないこと、原告のコンプライアンス部長が原告が上記レートの不正な操作をしておらず、裁判で虚偽の主張や証拠を提出したこともないと陳述していることに照らせば、現時点において、本件各記事について、名誉毀損の違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情(真実性)は存在しないと認められる。なお、発信者情報開示請求訴訟において、発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について、原告に立証責任を課すのは酷というべきであるから、原告は、発信者が摘示事実を真実であると信じるに足りる相当な事由の不存在について立証しなくとも、権利侵害の明白性は認められると解する。

東京地判令和4年11月8日(令和4年(ワ)第14686号)

(「原告が性加害者(性的暴行を行った者)である」又は「原告が性加害に関与していた」との摘示事実について)

原告が性加害(性的暴行)を行った事実も、性加害に関与していたとの事実もなく、本件投稿の摘示事実は真実ではない。原告は、俳優ではあるが、私人であり、原告に関わる事実が公共の利害に関係するとはいえず、公共性も公益目的性も認められない。よって、本件投稿に、違法性阻却事由は存在しない。

東京地判令和4年10月31日(令和4年(ワ)第15316号)

原告の子らが別の野球チームから移籍したことを契機に当該チームが解散になった事実は認めることができるものの、それを超えて、原告が当該チームを潰したであるとか、解散に追いやった事実は認められないのであって、本件投稿が真実であったとは認められず、真実性の抗弁も認められない。 なお、被告は、真実相当性の抗弁によって不法行為が認められないことをも主張するが、法4条1項1号の「権利が侵害されたことが明らかであるとき」について、請求者に責任阻却事由が存しないことまでの立証を要求するものとは解されない。よって、この点の被告の主張は採用することができない。

東京地判令和4年10月3日(令和4年(ワ)第4278号)

(「犯罪企業個人情報漏洩ハラスメント暴力なぜ捕まらないのか」「三国人の爬虫類人を採用して違法行為さすが売れ残り」「仕事中に身体触ったり食事に誘うんはおかしいんちゃうん?オバちゃんいい加減にせんとセクハラで逮捕されるぞ!」との投稿について)

被告は、本件投稿以前にも本件投稿と同様の投稿がされていたことからすれば、本件投稿は相当な根拠に基づくものである旨を主張するところ、本件サイトには前記認定事実(1)のとおり、本件投稿以前にも原告に関連すると思われる投稿がされているが、何ら具体的な裏付けのないこれらの投稿の存在をもって、本件投稿の摘示事実が真実であると信じることにつき相当な理由があるとはいえず、違法性阻却事由の存在を窺わせる事情は認められない。

東京地判令和4年9月30日(令和4年(ワ)第15897号)

(原告が借りた物を返さない人物であるとの摘示事実、原告がストーカー行為をしているとの摘示事実、原告が客ではない女性に手を出して騙すということをして紛争になっているとの摘示事実、原告が性病に罹患しており、いわゆる枕営業を行い、客の女性に性病をうつしているという摘示事実について)

これらの記事(上記ア)が摘示している内容が事実であると認めることはできず、一件記録を精査しても、これらの記事の投稿による名誉毀損につき、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は見当たらない。

東京地判令和4年9月29日(令和4年(ワ)第11023号)

(本件店舗で勤務する風俗嬢「X’」の接客を受け、同人の女性器と接触した結果、男性器がかゆくなる症状の性感染症に罹患したとの摘示事実について)

上記摘示事実が真実であることがうかがわれる事情は認められず、違法性阻却事由は存在しないと認めることができる。

東京地判令和4年9月26日(令和4年(ワ)第2680号)

(「北海道D市で、被害者が亡くなった事件の加害者の一人、C男が『X(X’)』であるという情報が出てきました。そしてXの顔写真やSNSも特定されたようです。父親や兄弟についての情報もまとめました。」「現時点で今回の事件に関わった加害者は以下の通りです。(中略)加害者C男…X(X’)?(X’’)?」「Xの顔写真特定(中略)こちらが加害者C男として情報が拡散されているXの顔写真です。(中略)加害者犯人として特定されたわけではありませんので、こちらでモザイク処理をさせていただきました。」との投稿について)

被告は、原告が本件事件の加害者であるという記事は上記ブログ以外にも多数散見されること、本件事件はいまだ捜査中であることから、原告は本件事件と無関係であるという証拠はなく、真実ではないことが明らかであるとはいえないし、真実であると信じることにつき相当の理由があった旨を主張する。
しかしながら、前記認定事実(1)エ及びオのとおり、被害者遺族、原告及び原告の父親はいずれも原告と被害者との間には何ら関係性がない旨を明確に述べているところであり、原告が本件事件の加害者であるという摘示事実について、単にインターネット上で複数の者が何ら根拠もなく述べているとか、本件事件がいまだ捜査中であるというだけでは、上記摘示事実が真実であること又は真実であると信じることにつき相当の理由があったことを疑わせる事情があるものとはいえない。

東京地判令和4年9月21日(令和4年(ワ)第9647号)

(原告が、Cで知り合いでない相手に絡み、その相手が女性と知るや、異常な攻撃性をもって、罵声を浴びせたとの摘示事実について)

本件投稿2は、原告と見知らぬ女性との間の論争に関わるものであって、原告が、インターネット上で原告自身の見解を示す活動を行っていることからすると、公共の利害にかかわるものであり、その目的がもっぱら公益を図ることにあるものと推認することができるものの、証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば、本件投稿2が適示する上記事実が真実であるとうかがわせる事情は認められない。

東京地判令和4年9月5日(令和4年(ワ)第10100号)

(原告=本件アカウントの者がホストの指名を続けている摘示事実について)

原告が、ホストクラブに通いホストを指名している事実自体が認められないから(甲10)、本件投稿1は反真実であって、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は認められない。

東京地判令和4年8月30日(令和4年(ワ)第4692号)

(原告が客に対して、高額な対価を示して、禁止されている性的サービスの提供を持ち掛けている」との摘示事実について)

証拠(甲2、9、11、12)及び弁論の全趣旨(原告は本訴提起を本件店舗の店長に告げて協力してもらっているところ、上記摘示事実が真実であることが発信者から証明された場合の仕事上のリスク(30万円の反則金のペナルティがある。甲11)も負担した上で本訴を提起しているということができる。)によれば、本件投稿の上記摘示事実がその重要部分について真実であるということはできず、本件投稿には上記摘示事実の根拠も挙げられていないのであるから、発信者において同事実を真実と信じるにつき相当な理由があることをうかがわせる事情も存在しない。

東京地判令和4年8月25日(令和3年(ワ)第31863号)

(原告は数年以上前から商標登録されているFGOの公式ロゴを無断で使用していた旨の摘示事実、原告は周囲の者を扇動して他者に攻撃的な行動に出ることがある旨の摘示事実について)

被告は、ログイン時の通信の契約者からの回答(乙9、10)を基に、〈1〉原告は第三者からFGOのガイドラインに違反する公式素材の使用等をしたことを指摘されても何ら反論していなかった旨、〈2〉原告はシナリオの書きおこしを公開していた旨、〈3〉その他にも盗用が指摘された例がある旨などを主張し、真実性又は真実相当性がある旨を主張する。
しかしながら、〈1〉〈3〉インターネット上で複数の第三者から指摘を受け、反論をしていなかったとしても、これをもって摘示事実が真実であるか又は真実であると信じることにつき相当な理由があるということはできず、同主張を採用することはできない。
また、契約者の回答には、〈2〉原告がFGOのシナリオの書きおこしを公開していた旨の記載があるものの、前記(3)のとおり、本件投稿の摘示事実はFGOの公式ロゴを無断で使用したという事実であるから、同事実の真実性又は真実相当性を基礎づけるものとはいえない。なお、公式ロゴ「など」を無断で使用する「など」の行為に含まれるとして、上記摘示事実に関連するものとも考えられるが、明示されている「公式ロゴを無断で使用する行為」についての真実性に関する事情がない以上、いずれにせよ摘示事実の重要部分について真実性又は真実相当性を示す事情があるものとはいえない。

東京地判令和4年8月18日(令和4年(ワ)第8106号)

(原告の言動についての、「誹謗中傷」や「国を騙る」ものであるという評価、意見又は論評について)

本件投稿の前提としている事実が重要な部分について真実であることを認めるに足りる主張立証はなく、他に、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情も見当たらない。

東京地判令和4年8月8日(令和3年(ワ)第32651号)

(D寺が変な新興宗教にはまったせいで(「信仰宗教」というのは「新興宗教」の誤字であると認められる。)、色々なやり方を全部変えてしまったことにより、檀家から嫌われているといった摘示事実について)

原告が新興宗教にはまってD寺の色々なやり方を変更している事実やそれにより檀家が困っている事実が存在することをうかがわせる事情はないから(甲1)、本件投稿〈1〉の内容が真実であるとは認められず、違法性阻却事由は存在しない。

東京地判令和4年7月29日(令和3年(ワ)第32174号)

(原告の設置する学校についての、「安全配慮を怠っていたために、複数の生徒が退学する、不登校になる、心的障害を負うという惨事があった」との記事及び「些細なことで激昂して喚き散らす、スピーチコンテストのクラス代表を決める投票不正を野放しにするなどの言動に問題がある教師を、特にケアすることなく長年在籍させ、クラス担任を持たせていたために、精神的苦痛を受けた生徒や教師が何人も出たことがあった」との記事について)

これらの事実が真実であることをうかがわせる何らの根拠も示さないままでの投稿であることからすると、名誉侵害による不法行為の成立を阻却する事由が存在することをうかがわせるような事情があるとも認められない。

東京地判令和4年7月29日(令和4年(ワ)第3808号)

(「「和を大切に、絆アピール、極め付けはホームページに作り笑いの集合写真。100%ブラック企業」との記事について)

本件記事において、一般閲覧者の通常の注意と読み方をして、上記摘示事実の真実性の根拠として受け取られる可能性のある記載は、「和を大切に、絆アピール、極め付けはホームページに作り笑いの集合写真。」という部分であり、原告が社員の和を大切にし、社員間の絆を対外的にアピールしているという事実、原告が自社のウェブサイトにおいて作り笑いをした従業員の集合写真を掲載しているという事実を摘示した部分であると認められるところ、後者については自社のウェブサイト上の集合写真における従業員らの笑顔が写真用に意図的に作出されたものであるか否かは画像から一見して明らかになる事柄ではない上に、仮に上記各事実が認められるとしても、それらの事実をもって、原告が労働法を全く順守していない違法な労働環境にある企業であるという事実を推認することはできない。本件記事には、その他に、原告が労働法を全く順守していない違法な労働環境にある企業であるという事実が真実であることをうかがわせる事実の記載がない上、原告代表者が、上記事実を否定し、原告は自社のウェブサイトに記載しているとおり、法令を順守し、運転手の安全管理に努め、従業員は有給休暇をしっかり取得している旨を述べていること(甲5ないし7、9、10)に照らすと、上記記事の摘示事実は真実性が欠如しているものと認められる。

東京地判令和4年7月29日(令和4年(ワ)第3808号)

本件医院の元理事長は、原告とF(以下「F」という。)が、本件医院において横領を行っていた旨陳述しているほか、これと符合する内容の患者の陳述書や領収書が存在することが認められる(乙1~4)。しかしながら、原告は、横領の事実を否認し、被告の提出する上記各証拠も、専らFに係るものであり、原告に関するものとしては、元理事長による原告がFに横領を指示していたという陳述と、原告が派手な生活をしていたことを裏付けるSNSの投稿等のみであって、いずれも原告が横領をしていたことを直接証明するものではない。しかも、元理事長の陳述は、代理人弁護士による聞き取りという体裁をとっており、元理事長の陳述自体、伝聞にすぎないし、この点を措くとしても、その陳述内容は、原告がFに横領を指示していた具体的な根拠に乏しい。患者から金銭を受け取る部屋と受付との間の通路には監視カメラが設置され、容易に現金を抜き取ることができない状況であったことがうかがえ、実際、現金を抜き取る場面の録画等も提出されていない(甲15)。プロバイダ責任制限法5条2項が、発信者の匿名性を維持し、発信者自身の手続参加が認められていない手続法の枠組みの中で、発信者の有するプライバシー権や表現の自由等の権利ないし利益と権利を侵害されたとする者の権利回復の利益をどのように調整するかという観点から、権利侵害の明白性の要件を設け、発信者情報の開示を請求する側において、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情がないことを主張立証する必要があるとされていることからすれば、その要件該当性の判断に当たっては、権利回復の機会を事実上閉ざすことになるような解釈をとるべきではない。本件に関していえば、横領をしていないことの完全な立証はおよそ不可能を強いるに等しく、名誉毀損訴訟において、被告側が主張立証責任を負う違法性阻却事由(真実性)の判断と完全に同一である必要はない。そうすると、原告が本件医院において横領を行っていた可能性を完全に否定することはできないものの、他方で、被告の提出する上記各証拠のみをもって、原告が横領を行ったという事実が真実であることをうかがわせるとまではいうことができず、原告は、本件医院において横領をしていないことを一応立証しているというべきである。
また、原告が、横領がばれたことで本件医院について嘘の情報を流しているとの事実は、横領の事実とは別途に原告の社会的評価を低下させる事実であるところ、これを裏付ける証拠は何ら提出されておらず、真実であるとは認められない。

東京地判令和4年7月13日(令和4年(ワ)第4077号)

(原告の従業員が、全乗務員の前で原告の社長から怒鳴られたりし、車のワイパーを掴まれて襲われそうになったとの摘示事実、原告には従業員の身内が死んでも休ませないといったコンプライアンス上の問題が多数あるとの摘示事実、原告の社長が「労基法なんて何処も守ってないから。労基法なんか守っていたら会社が成り立たないんだよ!!」等と発言したとの摘示事実について)

原告代表者の陳述書(甲1)によれば、同人は本件投稿1で指摘されている従業員に対して理由もなく怒鳴りつけたのではないこと、従業員に適切に忌引きを取得させていること、本件投稿3で指摘されている発言をしていないこと、本件投稿4や同5で使用されている写真に写っているバスは原告のバスではないことが説明され、これに沿う証拠(甲13から17、19)が提出されており、上記各事実が真実ではないことが一応立証されているといえるのに対し、それが真実であることを窺わせる積極的な証拠はない。

東京地判令和4年6月30日(令和3年(ワ)第34179号)

(原告会社が北朝鮮と関係性がある摘示事実について)

弁論の全趣旨によれば、原告会社が北朝鮮と関係性があるとの事実は認められず、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情は見当たらない。

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