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著作権法113条9項の問題点

 弁護士 小倉秀夫

令和8年改正前の著作権法第113条第9項は以下のような規定でした。

第九十四条の二、第九十五条の三第三項若しくは第九十七条の三第三項に規定する報酬又は第九十五条第一項若しくは第九十七条第一項に規定する二次使用料を受ける権利は、前項の規定の適用については、著作隣接権とみなす。この場合において、前条中「著作隣接権者」とあるのは「著作隣接権者(次条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を有する者を含む。)」と、同条第一項中「著作隣接権を」とあるのは「著作隣接権(同項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。)を」とする。

 これが令和8年改正では、以下のようになります。

第94条の2、第95条の5第3項若しくは第97条の5第3項に規定する報酬又は第95条第1項、第95条の2第1項、第95条の3第1項、第97条第1項、第97条の2第1項若しくは第97条の3第1項に規定する二次使用料を受ける権利は、前項の規定の適用については、著作隣接権とみなす。この場合において、前条中「著作隣接権者」とあるのは「著作隣接権者(次条第9項の規定により著作隣接権とみなされる権利を有する者を含む。)」と、同条第1項中「著作隣接権を」とあるのは「著作隣接権(同項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。)を」とする。

 まあ、実演家及びレコード製作者の二次使用料請求権の範囲を拡大したのだから、第113条第9項もそれにあわせたというわけで、自然な改正に見えます。しかし、そもそも、第113条第9項自体が不思議な規定です。

 「前項の規定」すなわち第113条第8項は以下のような規定です。

次に掲げる行為は、当該権利管理情報に係る著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

一 権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為

二 権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による場合その他の著作物又は実演等の利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる場合を除く。)

三 前二号の行為が行われた著作物若しくは実演等の複製物を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて輸入し、若しくは所持し、又は当該著作物若しくは実演等を情を知つて公衆送信し、若しくは送信可能化する行為

 実演家やレコード製作者に関する情報について虚偽の情報を故意に付加した場合等においては、それだけで、第113条第8項により、実演家やレコード製作者の著作隣接権を侵害する行為とみなされ、差止請求権を行使することができます。さらに、実演家やレコード製作者に関する情報について虚偽の情報を故意に付加した場合等において二次的使用料を受ける権利を侵害されたものとみなし、しかも、それを著作隣接権侵害とみなす規定を置く必要性が理解できません。

 著作隣接権の侵害とみなされることにより著作権法第114条の損害額みなし・推定規定の適用を受けられるといってみても、これらの規定を用いて損害額を算定する際には、侵害数量がベースとならざるを得ません。しかし、権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加しただけでは損害額算定の起訴となる侵害数量が出てきません。権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加されたコピーの数だけ著作隣接権侵害行為がなされたとみなすのだという場合、録音・録画権や複製権などの著作隣接権が侵害されたとすればいいだけであって、二次使用料請求権が侵害されたと見なし、さらにそれを著作隣接権侵害と見なす必要性がよくわかりません。

 多分適用されることはないと思うので有害な条文とまではいいませんが、無駄な条文を置いておくのはいかがなものかとは思います。

113条9項の問題点の図