弁護士 小倉秀夫
ライブハウスなどでライブパフォーマンスをするにはどうすればいいでしょうか?
大きく分けると2つのパターンがあります。1つは、ライブハウスやプロモーターから出演依頼を受けて、これに応ずると言うパターンです。もう一つはアーティストやその所属事務所(プロダクション)が特定の日時に特定の会場を使用する権利を取得して、自らライブイベントを主催するというパターンです。これ以外にも、プロモーターとプロダクションがライブイベントを共済すると言うパターンや、他のバンドやプロダクションが主催するライブイベントに胎盤として呼ばれて出演するというパターンもあります。
アーティストまたはそのプロダクションがライブイベントを主催する場合、ライブ会場の運営者との間でホールレンタル契約を締結することになります。契約の名前は、会場の運営者が決めるので、例えば「施設利用契約」というような名前になることもあります。
ホールレンタル契約の一方当事者は、そのライブ会場を保有する事業者がなるのが原則ですが、ライブ会場を保有しているのが地方公共団体である場合、当該自治体から指定を受けた指定管理事業者が契約当事者になることがあります。もう一方の当事者は、ライブイベントを主催するアーティストやそのプロダクションがなることになります。ただし、ライブ会場によっては、ホールレンタル契約を申し込む際に、事前に団体登録をするように求めてくるところがあります。この場合、ホールレンタル契約の一方当事者は法人格を有するプロダクションに限定されることになります。

ライブ会場についてホールレンタル契約を結んでアーティスト側でライブイベントを主催する場合、アーティスト側は事前に定められたレンタル料金を会場運営者側に支払う義務を負うのが通常です。このため、チケットの売り上げが一定数を割り込むときには、アーティスト側が赤字を負担することになります。その代わり、チケットの売り上げが大きくなれば、チケットの売り上げからレンタル料を差し引いた分がアーティスト側の粗利になりますので、大きな利益を得ることができます。会場で飲食物が有料で提供される場合、その利益を会場運営者側とアーティスト側でどう配分するかについては、会場がとアーティスト側との契約で決まります。とは言え、会長側はそのような場合にアーティスト側にどれだけを配分するのかについては、あらかじめ基準を持っていて、交渉によってその割合を変える気は多分ないと思うので、どのような配分割合になってるのかを事前に確認することぐらいしか事実上できないと思います。
では、どうやって、ホールレンタル契約を結べばよいのでしょうか。
いまどきは、ほとんどのライブ会場について、その運営会社や指定管理事業者がWebサイト上でホールレンタル契約の募集をしていますので、これを利用するのが一般的です。希に、ホールレンタル契約の募集するWebページがなかったり、電話で募集するようにとの指示がなされている場合、その運営会社等に電話をしてホールレンタル契約の申込みをすることになります。ライブ会場によっては、定期的に、ホールレンタル契約についての抽選会を行っている場合があります。そりゃ、土日祝日にライブイベントを開いた方が集客はしやすいので、そこに希望があるまるからです。その場合、まずは、希望日を指定して抽選に応募することになります。抽選にはずれた場合でも、申込みがなかった日については、個別交渉でホールレンタル契約を締結できる場合があります。なので、土市祝日でなくてもよいという場合、運営会社等に電話や電子メールなどで確認しておくと良いと思います。

では、ホールデンタル契約において注意すべき点はどこでしょうか。
もちろん、レンタル料を何円、いつまでに支払わなければいけないのかということは最初にチェックすべきことです。
また、当日どのような設備機材を使わせてもらえるのか、どのようなスタッフにどんな作業を手伝ってもらえるのかをチェックしておくこともまた、どれに劣らず重要です。これらは、ライブ会場によってかなり差があるからです。
スピーカーやアンプについて会場に用意してあるものをそのまま使えるのであれば、アーティスト側でこれらを搬入する必要がなくなり、アーティストはギターやベース、ドラムなどの楽器自体や、エフェクターなどの最低限の装備を搬入すれば足ります。また、アーティスト側にピアノを演奏する演者がいる場合、会場にピアノがおいてあるかどうか、置いてある場合にこれをライブで使用できるかは重要です。ライブ当日ピアノをアーティスト側で搬入するというのは通常現実的ではないので、電子ピアノ等の搬入を検討する必要が生じます。
音楽系のライブイベントでは、音響スタッフと照明スタッフ、受付スタッフは最低限必要となります。ライブ会場側でこれらのスタッフを送り込んでくれることが多いのですが(会場に備え付けられた機材を操作しますので、素人に触られても困りますし。)、一応確認しておくことが必要です。それ以外のスタッフ(例えば、警備担当や、楽器のセッティング・交換等を行うローディや、物販担当等)は、アーティスト側で用意するのが原則ですが、会場によっては、追加料金を支払うことで、それらのスタッフを会場側で用意してもらうことができる場合があります。医療スタッフについては、(モッシュやダイブを事実上容認する予定でいる場合等)必要があればアーティスト側で用意します。その場合、救護スペースを会場側で用意してもらえるかは、契約時に確認しておく必要があります。
そして、どのくらいの期間会場を押さえておくのかについても注意が必要です。ライブイベントを行っている時間帯だけでなく、機材や舞台装置等を会場に搬入し始めてから、そのセッティングを終え、音響チェックやリハーサルを行い、ライブイベントを行い、終了後機材や舞台装置を撤去し、搬出するまでの時間は、アーティスト側で押さえておく必要があります。ライブ会場側としては、中途半端な時間空けられてもその時間を他のアーティストにレンタルすることは期待できないので、1日貸切か昼枠・夜枠で分けるか程度しか選択肢を与えないことが多いです。
さらに、JASRACとの音楽著作権管理団体との契約がどうなっているのかも確認しておく必要があります。というのも、会場運営者側でJASRAC等と包括利用許諾契約を結んでいることは決して希ではなく、その場合、アーティスト側でJASRAC等から楽曲の利用について改めて許諾を受ける必要がなくなるからです(自分たちが作詞・作曲した楽曲を演奏する場合でも、それらの曲がJASRAC等に委託管理されている限り、営利目的または有料ライブでの使用については、JASRAC等の許諾が原則必要となります。)。
その他、ホールレンタル契約では、天変地異等アーティスト側の責めに帰することができない事由でライブイベントができなくなった場合にどうするのか、法的トラブルが発生した場合の管轄裁判所をどうするのか等の条項が入るのが通例です。
