東京地判令和7年3月7日(令和6年(ワ)第70276号)

事案の概要

 XがYouTube上で配信している動画の一部がギガファイル便にアップロードされ、そのURLが電子掲示板上に投稿された。Xは、電子掲示板へのURL投稿者のA PであるGMOに対して、投稿者の発信新車情報の開示を求めた。

争点

 URL投稿者とギガファイル便へのアップロード者が同一人物ではない場合、URLを投稿する行為は、公衆送信権の侵害行為またはその幇助に当たるか。

裁判所の判断

 「ギガファイル便のサービスを用いてファイルをダウンロードするためには、ファイルのダウンロードページのURLが必要であるところ、ダウンロードページのURLは、ファイルをギガファイル便にアップロードした者にしかわからない仕組みとなっているといえる。本件動画ファイルについても、本件URLを知らなければ、これをギガファイル便からダウンロードすることはできなかったものと認められるところ、本件記事が投稿された時点までに、本件URLについて、インターネット上で公開されるなど、不特定の者や多数の者に知られていたことはうかがわれない。」

  ↓

「ギガファイル便にアップロードされた本件動画ファイルについては、本件記事の投稿の前には、不特定又は多数の者からの求めに応じ自動的に送信されることはなかったものであるが、本件記事の投稿によって、不特定又は多数の者がダウンロードすることができるようになり、自動公衆送信されるにいたったものというべきであ」る。

  ↓

「本件記事の投稿は、不特定又は多数の者によって直接受信されることを目的として、不特定又は多数の者からの求めに応じ本件動画ファイルを自動的に送信することを可能としたというべきであるから、本件投稿者は、本件配信動画に係る著作権(公衆送信権)を侵害したものといえる。」

簡単な解説

 裁判所は、ギガファイル便については、データがアップロードされても、そのURLが不特定の者や多数の者に知られていない段階では、未だ「不特定又は多数の者からの求めに応じ本件動画ファイルを自動的に送信することを可能とした」とはいえないから送信可能化には至っておらず、そのURLを不特定または多数の者が知り得る状態に置くことによって初めて、「不特定又は多数の者からの求めに応じ本件動画ファイルを自動的に送信することを可能」とする送信可能化行為がなされるに至ると判断しているようである。

 ギガファイル便自体は、通常、1対1でのデータの送受信に用いるものなので、ギガファイル便にデータをアップロードした時点で送信可能化が成立するというのは、経済実態としては、確かに違和感が残るところではある。ただ、ギガファイル便のURLを不特定または多数の者が知り得る状態に置くことが著作権法第2条第1項第9号の5のイないしロの行為のいずれに当たるというのかが定かではなく、条文解釈としては大胆というより他ない(送信可能化は、著作権法第2条第1項第9号の5のイないしロのいずれかに掲げる行為により自動公衆送信し得るようにする行為をいう。)。

 判決文には「送信可能化」という言葉はないので、送信可能化を伴わない自動公衆送信がなされたという認定なのかもしれない。その場合、実際にダウンロードがなされた事実の主張立証が必要だと思われるが、それはそれで難しそうである。

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