宿泊予約サイト「じゃらん」のスーパーホテル釧路駅前の「お知らせ・ブログ」ページにおける平成27年10月10日付けのブログ記事(令和5年6月6日まで、一般公衆が閲覧可能な状態にあった。)において、Xが作成したイラスト画無断掲載されていたとして、XがY(スーパーホテル)に対して損害賠償請求をした。
ブログ記事にて著作権侵害がなされた場合、使用料相当金の算定に際しては、当該ブログ記事の掲載期間全てを対象とするべきか。
「本件掲載行為は、平成27年10月10日に、本件ウェブページの「☆体育の日☆」と題するブログ記事(本件ブログ記事)内で、「実は、、、本日10月10日が2000年まで体育の日!!ハッピーマンデーで10月の第2月曜に変わり今年はあさって10月12日が体育の日になりますねー」などとする記述とともに行われたが、本件ウェブページにおいては、本件掲載行為以後も、ブログ記事が次々と相当数にわたって投稿されており、これにより本件ブログ記事は順次表示順位が下がり、当該記事にたどり着くために閲覧者において相当の操作が必要な状態となっていた」
↓
「この事情からすると、本件ブログ記事の内容自体は、想定される本件ウェブページの利用者の主たる関心事項等との関連が薄く、そもそもさして注目を引く内容とは言えない上、一定の期間の経過により陳腐化する内容であることに加え、本件ウェブページの仕様により、本件掲載行為後に新たな多数の記事が追加された結果、本件ブログ記事が閲覧される可能性は極めて乏しくなっていたものというべきである。」
↓
「このように著作物の利用状況が経時的に変化した事情は、著作権法114条3項に基づく損害を検討するに当たり考慮すべきであり、上記の掲載開始から当初1年間分の単価3万円を基礎とした、本件掲載行為から本件ブログ記事の消去(侵害の終了)までの損害全体は、消費税相当額の損害を含め18万円を上回ることはないと認められる。」
著作権侵害に基づく損害賠償請求をする場合、著作権の「行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」を自己が受けた損害の額として請求することができる(著作権法第114条第3項)。同項は、もともと著作権の行使につき「通常受けるべき金銭の額」という文言が採用されており、「権利者は、自分がどれだけの損害を受けたかということとは関係なしに、何らの立証も要しないで、社会的な相場だけは請求できる」ということにしていた(加戸守行「著作権法逐条講義[7訂新版]887頁)。しかし、平成12年改正で「通常」という文言が削除され、その結果、」「使用料額の認定において、一般的相場にとらわれることなく、訴訟当事者間の具体的事情を考慮した妥当な使用料額が認定できることを明確に」した(加戸守行「著作権法逐条講義[7訂新版]887頁)
ブログと言っても多種多様であり、かならずしも過去の記事が参照されなくなるとは限らない。しかし、「じゃらん」という宿泊予約サイト内の、特定のホテルが作成しているブログ記事は、その時々のホテル周辺のイベントや名所情報等が掲載されるのが通例であるから、過去のブログ記事を遡って閲覧しようという人が少ないだろうという認定は理解可能である。
ただ、イラスト等のウェブサイトでの使用料規定においてアクセス数に応じて料金を変える実態がない場合に、過去記事で、もう閲覧される機会が乏しくなったというこということを、使用料相当額を引き下げる要素として認定した部分は大胆である。